Tibial condylar valgus osteotomy(TCVO)
膝周囲骨切り術には様々な手術方法があり、TCVO(Tibial condylar valgus osteotomy、脛骨顆外反骨切り術)は長崎大学千葉先生が開発され、その後寺本先生が国内に広め、現在の米倉暁彦先生が科学的に解説するようになってから、現在はヨーロッパ、中国でも行なわれている手術方法です。外傷後など脛骨内側の変形が強いが年齢が若く人工膝関節置換術が行えない患者さんには唯一の治療法になります。留学中にTCVOのことを何回か聞かれましたが、当時私には経験がなく答えられませんでした。EUの先生方は、日本ではよく行われている手術方法と思っていたようです。
私が医師になりたてのころ、千葉先生の発表を何回か聞かせていただきましたが、皆にいろいろ質問されていて大変そうだったのをよく覚えています。日本人は海外から入ってきたものは受け入れますが、国内で新しいことを始めると受け入れられないようです。
私も卒業年度が同じの米倉先生に教えていただき、年に1回ほどTCVO手術を行っています(リンク)。また、千葉先生の息子さんの千葉 恒先生が英文を書いています。患者さんの変形に合わせて、適切な手術をすべきと考えるようになりました。
30台男性、複合靭帯損傷後のケースで、TCVOを行いました。手術前の計画通りに角度調整をすることが難しい手術です。
現在、仕事をして、日常生活もなんとか行えています。
外側型変形性膝関節症(X脚変形)
ドイツでは膝骨切り手術をうける患者さんの3-4割が外側型変形性膝関節症(X脚変形)ですが、日本ではほとんどが内側型変形性膝関節症(O脚変形)で私のところでは5%前後です。変形の強い、X脚変形では荷重線をやや内側に移しますが、日常生活での痛みをとることを目標としています。X脚変形の方が長持ちするようで、O脚変形と異なり、外側の軟骨が少し残っている中程度の変形で手術を希望される方は、あまりいません。ほとんどが外側の軟骨がほとんどなくなった以降で痛みが増し手術を希望されます。
59歳女性 日常生活の痛み
左:正面でX脚変形を認め荷重線(白線)が外側の関節面を外れています。中央:内反ストレスで内側の軟骨は残っているので、内側に荷重を移せます。右:外反ストレスで外側の軟骨がありません。
左:手術前、荷重線が中央よりやや内側を通るように骨切り術の計画を立てます。大腿骨遠位は内側closed、脛骨近位は外側openで計画しました。右:手術時の関節鏡所見では、内側の軟骨は大腿骨・脛骨側残存していますが、外側の軟骨は大腿骨・脛骨側とも完全に摩耗し骨が露出しています。
手術後2年たち日常生活には問題なくなりました。
若年者O脚変形(早期変形性膝関節症)
21歳女性で、しゃがみ込むときの膝内側部痛がありました。美容上、O脚変形を治したい思いも強かったようです。
右 Open wedge 高位脛骨骨切り術を行い、3か月後に左Open wedge 高位脛骨骨切り術を行いました。両膝関節内とも内側はsoftening(表面が柔らかくなっている状態)でした。
術前 両膝に著しいO脚変形があります。
両側術後レントゲン正面像です。中年者と異なり、軟骨摩耗がありませんでした。手術前このような手術をしていいのか悩みましたが、まっすぐな脚になり明るくなり、ご本人の満足度が高く、私もとてもうれしかったです。ただ、傷は残りますのでズボンで生活することになります(O脚ですと元々ズボンしかはかないそうです)。
術後 両膝とも若干X脚に矯正しました。