手術のタイミング
年齢、活動性、目的など手術を受けるタイミングは人それぞれことなります。スポーツ・レクリエション活動時の痛みをとりたい患者さん、日常生活での痛みをとりたい患者さん、さらに膝周囲骨切り術が望ましい患者さん、人工膝関節置換術が望ましい患者さんが、いらっしゃいます。
日常生活では、階段や下り坂を降りる前に憂鬱になるとき、毎朝一歩目から膝が痛く憂鬱になるときが手術をうけるタイミングと思います。診察室では、膝を少し曲げた角度で、動揺性すなわちグラグラ感がでてきた時(膝がガクッときたら手術のタイミングです)と考えています。スポーツ・レクリエーション活動では、そのスポーツ・レクリエーション活動が膝痛のためにできないときが、手術のタイミングになります。
(Monthly Book Orthopaedics 病態・経過でみる変形性関節症―どこで手術に踏み切るか―高位脛骨骨切り術の適応と手術のタイミングー)
手術をうける年齢
私が今まで行った1000例を超えた膝周囲骨切り術を行った患者さんの年齢分布は、18歳から85歳です。現在までの手術をうけた患者さんの平均年齢は62歳です。手術をうける中で多い年齢層は、45-75歳です。2010年以降は、30-50代で手術をうける患者さん、スポーツ・レクリエーション活動への復帰を目的にする患者さんが増えています。
膝周囲骨切り術ができる膝か?
変形性膝関節症の特徴的レントゲン所見は、片脚立位膝正面像で内側関節裂隙狭小化(内側の骨の隙間が狭い)、骨棘形成(骨のとげが出てくる)、骨硬化像(内側の関節に接する骨表面が白くなる)です。
レントゲン検査の手順
下肢全長レントゲンを撮り、その正面像から、アライメント計測(どれ位O脚か)と MediCAD Softwareを使った Deformity analysis(大腿骨と膝関節の変形、脛骨と膝関節の変形の分析)を行います。
スカイビュー撮影から、大腿膝蓋関節(お皿の裏側)の軟骨がすり減っていないか確認します。
Telos SE で外反ストレス(膝の外側から圧をかける)のレントゲンを撮り、外側関節裂隙の軟骨が残っているか評価します。
MRIを撮影し、前十字靭帯の有無を確認します。 中央:MRI側面像で前十字靭帯(赤→)、後十字靭帯(青矢印)は、しっかりしています。
この検査ほとんどの施設では行っていませんが、CTを撮影し下肢回旋計測をして、下肢の異常回旋がないか調べてます。被爆量を減らすために必要な場所だけ撮影します。左:股関節と膝関節を重ね合わせたCT像 右:膝関節と足関節を重ね合わせたCT像 ともに異常回旋はありませんでした。
以上が問題なければ、ほとんどの場合、膝周囲骨切り術(このケースではDouble level osteotomy:DLO)を行うことができます。
主な三種の膝周囲骨切り術
左:Open wedge 高位脛骨骨切り術、中央:Double level osteotomy、右:Closed wedge 高位脛骨骨切り術