変形性膝関節症と特発性膝骨壊死に対する膝周囲骨切り術の概要

変形性膝関節症特発性膝骨壊死(特発性大腿骨内顆骨壊死,脛骨内顆骨壊死)の手術方法に、自分の膝関節を残す膝周囲骨切り術(高位脛骨骨切り術,高位脛骨々切り術,Open wedge法,Closed wedge法,Hybrid法,Double level oeteotomy,大腿骨顆上骨切り術,TCVO など)があります。骨切り術ができるかどうかのための正確な評価にはレントゲン立位下肢全長像、スカイビュー像、内反・外反ストレス像(特に外反ストレス像で膝関節外側の軟骨が残っていることが必須です)、MRI像が必要です。骨棘(ほねのとげ)がある場合はCTを撮影し、三次元で骨棘の位置を確認します。PC上のソフトウェアMediCADと立位下肢全長像から変形解析(Deformity analysis)を行い、膝関節のみならず股関節、足関節を含めた、下肢変形度(アライメント)と関節角を測定し、正常値からの差をもとに各膝に合わせた骨切り術を提案します。
変形性膝関節症の重症度は、アライメントと動揺性によっています。内側の軟骨が摩耗しアライメントがO脚になると動揺性が出はじめ、次に外側の靭帯が緩んできます。そうすると階段、坂道を降りるとき膝の動揺性すなわち膝がガクッとなり、痛みが出現します。
手術を希望する患者さんには、日常生活での除痛を目的とする患者さんとスポーツ・レクリエーション活動での除痛を目的とする患者さんがおられます。それぞれ手術をうけるのタイミングが異なります。特に日常生活での除痛の場合、大部分のケースがO脚変形の痛みではなく、動揺性がでてきて手術を希望されます。膝周囲骨切り術は、O脚変形を軽度X脚に矯正し、膝の動揺性をとることができます。
手術は骨切り術前に関節鏡視下手術を30分行います。滑膜切除、半月板シェービング、内・外側半月板が切れていた場合は縫合術、内外側半月板後節(ルート)損傷縫合術、骨棘がある場合は切除(たいていの場合、大腿内顆内側、PF関節大腿内側、顆間の骨棘切除をしています。内側半月板が内方逸脱している場合には、脛骨内側骨棘を切除し、逸脱している半月板を元の位置に戻すCentralizationを行っています。
膝周囲骨切り術は、手術前に準備をした方法で、手術中にレントゲン透視をあて角度を確認しながら行います。簡単な場合は40分、複雑なケースは2時間かかります。感染、深部静脈血栓を起こさないため、長くかかる場合でも、トータルで2時間30分で終わられるようにしています。プレートとスクリューで固定し、骨癒合をした8-12か月後に抜釘を行います。プレートとスクリューは抜かなくてもいいチタン製のものが入りますが、活発な患者さんが手術をうけますので、ほとんとの場合プレートが皮膚に当たり痛くなり、抜釘を希望されます。
アライメント確認が困難なケースにはナビゲーションを使います。
手術後の結果は、手術中の矯正角度で決まります。
手術後は血栓の予防のためフットポンプを装着します。手術は全身麻酔で行い、手術後の痛みをとるため硬膜外麻酔を併用します。
リハビリテーションは、(手術日を0日目とすると)1日目に車いす移乗、2日目に立位保持と数メートルの歩行器での歩行、その後病棟→病院内歩行器で歩行、10-14日から杖または松葉杖歩行、3週間での退院を目指します。年齢が高かったり、のんびりリハビリをする場合は4週間かかっています。傾向としては男性は3週、女性は4週で退院する場合が多いです。
手術後は感染を起こす場合があります。喫煙・糖尿病・アトピー性皮膚炎の場合は感染率が上がります。これは皮膚の直下にプレートを入れ、皮膚とプレートが触れることで起こっていると考えています。
希に腰部脊柱管狭窄症による下肢筋力低下から膝痛が起こっている場合がありますが、このようなケースでは膝を治しても膝痛・下肢痛は改善しません。腰も悪い患者さんは手術前に時間をつくり平地・階段を一緒に歩いてみて評価するようにしています。また、O脚変形があるが膝痛がない場合はその時点で手術の必要はありません。変形度、フラフラ感などのため人工膝関節置換術を提案する場合もあります。人工膝関節置換術は今まで一番多く行ってきた手術です。